食品表示法の栄養成分を自分で計算
2020年4月より完全移行の食品表示法では、今まで表示義務のなかった栄養成分を表示する義務があります。
そのデータを実測で求めようとすると、少なくないお金を払って専門家にお願いすることとなります。筆者調べでは1件3万円とかいう話もありました。
そのような金額面の問題だったり、計算方法がわからなくて保留になっている事業者様向けに、国が提供している資料から加工食品用の栄養成分の推定値を出す方法を紹介します。
基本的にWindowsPCを持っている前提で話を進めます。
資料
もととなる資料は文部科学省が提供している日本食品標準成分表2015年版(七訂)です。
資料は一通り目を通していただく事を前提に話を進めます。また消費者庁より発行されている「早わかり食品表示ガイド」も合わせて読んでおくことをお勧めします。
こちらのページよりエクセル版の成分表がダウンロードできます。「一括ダウンロード(Excel:日本語) (Excel:917KB)」を選択してください。
エクセルがなくても大丈夫!
エクセル互換ソフトのLibre Office(無料)をダウンロードしてインストールしてください。
このページではLibre Office (Calc)を使って説明していきます。こちらを編集しながら計算していきますので、念のため原本ファイルをコピーしておくといいかもしれません。
不要なデータの削除
Libre Office Calcでファイルを開いたら不要な行を削除していきます。
左側の番号を選択すると行選択ができます。その状態で右クリックで「行の削除」が表示されます。それを選択して1~4行目を削除してください。
この時、Shiftキーを押しながら選択すると一括で選択できるので楽です。
栄養成分表示で必要な項目は「エネルギー(kcal)」と「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」「食塩相当量」です。あと、「食物繊維」と「飽和脂肪酸」は表示推奨項目になっています。
「食品名」と「備考」、前述の必要項目以外の列は削除します。行を削除したのと同じ要領で、A~続く上部の列名を選択すると列が選択できますので、右クリックメニューの「列の削除」よりを削除してください。
A列を選択した状態で、右クリックメニューから「左に列を挿入」を選択します。新しく空白のA列ができ、既存の列は繰り下げられます。
A列とB列の境界付近にマウスカーソルを持っていくとカーソルが⇔状態になるので、ドラック&ドロップでA列を縮めます。だいたい5、6文字入るぐらいにします。これは単に視覚的な問題なので気にならない人はそのままでもかまいません。
A列の商品の最初の列にx(小文字のエックス)を入れて、すべての行に反映させます。入力したセルの右下にマウスカーソルを持っていくと+の表示になるので、その状態でマウスをダブルクリックします。うまくいくとxが一番最後の行まで入ります。
このテクニックは以降でも使いますのでこの列で練習してください。おかしくなったら、列を削除してやり直してください。
すべての行にxが入ったら、A列を「総重量」にします。A列を選択した状態で上部タブの「編集」をクリックしてください。「検索と置換」のメニューより先ほど入力したxを数値の0に変更してください。
最初から数値の0でやらなかったのは、0を入れて同じことをすると連番になってしまうからです。連番にならないように設定を変更することもできますが、連番の設定は便利なので生かしたままにしておきます。
Aの右側に、「総エネルギー」の列を作ります。「総エネルギー」は既に存在する100g当たりのエネルギーの列を利用して、「総重量」からの計算で求めます。
最初の行(ここでは4行目)の総エネルギーのセルに次の式を入れます。
$マークはシフトを押しながら数値の4で出せます。
試しに総重量のA4に100と入れてみて、数値が「エネルギー」の列と同じになれば成功です。
先のxを全行に入力した要領で総エネルギーの列をすべての行に反映させます。
「総エネルギー」の次は「総たんぱく質」です。エネルギーの隣に列をついかします。先でD4(D列=エネルギーの4行目)と指定したものが、挿入作業後は自動的にE4セルを参照するように変更されますので気にせず、総食塩相当量まで必要項目数の列を作ってください。
列ができたら、今度はB4列で先ほどと同じようにセルの右下にカーソルを合わせて+をだしたら、ドラック&ドロップで「総食塩相当量」の列まで引っ張ります。そうすると、セルの場所に合わせて計算箇所を変えて式をコピーしてくれます。
式が正しくなっているか心配だったら、該当のセルをダブルクリックしてみてください。どのセルを使って計算するか視覚的に案内してくれます。戻る際はエスケープキー(キーボードの左上の端にあります)で戻ります。
4行目の計算式がすべて埋まったら、今度はまた+ダブルクリックの方法ですべての行に反映させます。注意点としては両側空白のセルやるとうまくいきません。また、複数セル選択すれば一気にできます。
一部エラーが出ているセルがあるので対応します。各100gあたりの栄養成分中にTrや-()といった数値ではない文字があるため計算できなくなっています。今回は()は外した数値をそのままいかし、そのほかは0と変換します。先ほど、xを0に変換したのと同じ要領で各栄養成分の列を選択し(左カッコと)右カッコを空白に、Trや-を0に置換します。
次に最終行に移動します。ここですべての計を出します。開始行が5と終了行が2194だった場合、「総エネルギー」列に次の式を入力します。
先ほどの横に引っ張る方法で、総食塩相当量の列まで計算式をコピーします。
仕上げに先頭の行の固定します。上部メニューより「行」を選択し「最初の行を固定」をクリックします。また、左端(1の上、Aの左)を押すと全セルが選択された状態になりますので、その状態から上部タブの「データ」→「オートフィルタ」でフィルタの修正をします。
ここまで作業できたら、もう一度ファイルを加工用の原本として保存しましょう。「ファイル」→「名前を付けて保存」から保存します。間違って先のバックアップに上書きしないように注意しましょう。
ここではODF形式を利用して保存します。筆者が作成したものをこちらにアップロードしておきます。このデータについて筆者は一切責任を負えませんが、サンプルで参照してみてください。
バックアップとして保存したので、もう一度名前を付けて保存をしてファイル名を変えます。
レシピ
ここからは食材のレシピに合わせて、総重量を入力していきます。レシピの用意をしてください。
レシピに基づいて原料を「品名」より検索し、それぞれの重量を「総重量」の欄に入力します。
下部に検索バーが出ていなかったら、上部「編集」タブより「検索」を選択してください。検索バーに原料名を入力して目的の原料を探して、その使用量を左端の「総重量」にグラム単位で入力します。文字入力欄の右側に、上向きと下向きのボタンがあります。上向きのボタンを押すと前の候補、ボタンを押すと次の候補に移動します。
名前の入力で気を付けないといけないのは、「きな粉」を見つけたい時に「黄な粉」や「きなこ」、「キナコ」と検索しても出てこないことです。
また、普段使っている名称がは実は俗称で掲載されていなかったり、別名として「備考」欄に入っていることもあります。
見つからなかったり、存在しなかったりした場合は、最終の合計行の前に行の挿入をして自分で栄養成分を入力してください。ネットで調べるとわりと融通がきいた状態で検索ができます。ミートボール等のできあいの商品を使う場合はその商品ラベルよりデータを利用することも可能です。載っていない場合は取引先に聞けば教えてくれます(取引先側も表示義務があるので)。
全ての入力がおわったら、漏れがないか確認します。総重量のフィルタ(▼)より0でないものを抽出します。▼を選択して「標準フィルター」で条件をフィールド名「総重量」、条件「<>」、値「0」をセットします。
すると0でないものだけが抽出されますので、最終確認をしてください。
あとは表示単位に合わせて割り算をします。たとえば、入力したレシピが1200g分だった場合、100g当たりの栄養成分表記をしたい場合は12で割った値を使います。
また、レシピで15個でき1個当たりで表記したい場合は15で割ります。
表示上の注意
この方法で算出した場合、栄養成分表示ラベルには「推定値」という表記が必要になります。